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映像かストーリーか

ビデオプロトタイピングのセッションがおわりました。つくっている最中は、つくるのに精いっぱいですが、振り返ってみるといろんなことに気づきます。それは、他のチームの作品をみたり、お互いのフィードバックがあったからでもあります。

自分のチームの作品に限って言えば、もっと寄り(close-up)のカットがあっても良かったなと思いました。写真を撮る時もそうですが、ついつい全体を写す写真に意識がいってしまいますが、効果的なクローズアップがあると、感情に訴えることができます。やりすぎは禁物ですが、映像を見ている人は、引きのカットをみていれば、寄りのカットをみたくなるものです。そうした欲望のコントロールと、伝えたいストーリーが交差するポイントをうまく作ることができれば、「そういうことか」という理解と、「いい感じだね」という感情を引き出し、共感につながっていくのだと思います。ある意味、映像って怖いですね。

理解と共感を得られるカットがあれば、時間も節約できます。5秒とか10秒とかで、コンセプトを理解してもらえれば、あとは詳細に入っていけます。そのためにも、文脈の設定が大事になっていきます。考えたアイデアを伝えるのに最も効果的な場面はどういうものなのか、誰がでてくるのか、何が起こるのか。そういうことを、ビデオの映像素材をつくる前に、考えてストーリーボードをつくりこみます。

僕らのチームも、ふりかえればストーリーボードがほとんど唯一の羅針盤だったと思います。途中、デザインの作業が多くなってからより詳しく書き直したストーリーボードが、時間との闘いのなかで、なんとか作品を仕上げるために、思った以上に役に立ったと思います。

全体の講評で議論されたのは、映像表現とコンセプトのバランス。映像表現に懲って、フィデリティ(ホンモノらしさ)を高くすることで、映像を見る人に、より実際に近いイメージを持ってもらえます。しかし、そこに時間を奪われてストーリーを伝えたり、サービスの説明をすることがおろそかになってしまったら意味がないということです。

なので、目的や時間によってはハイフィデリティを目指すことはもちろん良いことなのですが、コンセプトやストーリーが失われないように、そこにも時間がかけられるように、バランスをとっていくことが大切です。

全チーム、居残り編集作業


全体の一貫性(コンシステンシー)も、映像を見るひとにとってはとても重要なことなので、途中までハイフィデリティで、いきなりローフィデリティというのも良くありません。場合によっては、ミドルフィデリティーぐらいでプロップ(モノ)や映像を準備していくという判断をする必要があります。

ここ数年取り組んできたデジタルストーリーテリングの手法とのつながりもいくつか感じられましたし(またの機会に書こうと思います)、今後も、映像表現力とストーリーテリングの力をバランスよく高めていこうと思いました。After Effectは結局わからないままなので、基本的なところをLynda.comで補います。

アイデアを映像にするという意味では、数週間後に行われる今年で3回目となるグローバルサービスジャムが参考事例になるかもしれません。玉石混合というか、いろんなのがあるのでどれが良いとは言えませんが、参考までに去年のグローバルサービスジャムの作品集のリンクを紹介します。

Planet Jam

完成度が高いところで言えば、マイクロソフトがつくった映像があります。

Productivity Future Vision (2011)

ということで、また新しい一週間がはじまります。今週と来週は、人間中心デザイン(People Centred Design)  のセッションです。

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