去年の年始に読んだサービスデザインの教科書、This is Service Design Thinking。いまデンマークのいるきっかけのひとつでもあります。教科書として書かれたこともあって、深く知りたいニーズには向きませんが、イントロダクションとしては最適です。歴史的なこと、実践的なこと、学術的なことまで、バランスよく網羅されています。
翻訳の提案のために、下訳した目次の項目をせっかくなので公開します。一番難しかったのはタイトルのThis is Service Design Thinkingをどう訳すか。著者たちも本文のなかでわざわざ説明しているくらいのタイトルです。いきなりの難題です。私の訳は・・・、仕方なくこうなりました。
=====目次=====
This is Service
Design Thinking. Basic - Tools – Cases
これがサービスデザイン思考です。 基礎・ツール・実践
出版社 john Wiley & Sons,
Inc. / BIS Publishers, 2010年
著者 Marc Stickdorn, Jacob Schneider
【構成(目次)】
まえがき、本文全七章、付録、著者について、参考図書一覧、索引
【概要】
目次
イントロダクション
まえがき
・サービスデザイン思考の教科書をめざして
・本書の構成 基礎、ツール、実践について
デザインを超えたデザイン これまでとは違う教科書づくりの方法
・動機(モチベーション)とインスピレーション
・経験(エクスペリエンス)と期待(エクスペクテーション)
・アイデアとコンセプト
・少し変な書名について
クラウドソーシング・マップ
〈サービスデザインに関する情報を提供しているリンク集を紹介〉
この本の使い方
・青い付箋は基礎、緑の付箋は手法、黄色い付箋は実践
サービスデザインとは何か? 基礎
定義集:超領域的手法としてのサービスデザイン
・サービスデザインの定義 学術編
・サービスデザインの定義 エージェンシー編
サービスデザイン思考の五つの原則
ダイナミックな手法のためのダイナミックな言語
顧客 サービス提供者 関係者 サービスデザイナー
1.ユーザー中心
・共通言語をみつけよう
サービスは、サービスの提供者と顧客の関係性のなかで生まれる。
・どうすれば、ユーザー中心的なサービスをデザインできるか
サービスに関わる様々な人たちと一緒に仕事をする場合には、お互いの言葉や文化の違いを理解し、ユーザーの言葉でやりとりしよう。
2.コークリエイティブ(共創)
・誰でもクリエイティブになれる!
サービスデザインの過程では、顧客だけではなく、サービスを形づくっている様々な関係者たちの参加が必要である。
・どうすればサービスの関係者をデザインのプロセスに参画させられるか
サービスデザイナーは、様々な手法やツールを使いながら、多様な関係者のアイデアを引出し、サービスを作っていく環境をつくる。
デザインのプロセスに顧客や従業員の参加することで、双方の満足度が高まり、顧客との長期的関係性も築くことができる。
3.シークエンス
・サービスを映画として想像してみよう!
サービスの流れやリズムの良さが、顧客のムードをつくる。
・どうすればサービスのリズムに影響を与えられるか
サービスの前、サービスの最中、サービスの後、などの段階を意識し、優れた演劇や映画のように、関心や期待を満たしていく。舞台上だけではなく、裏方の仕事も大事だし、リハーサルも必要。
4.見える化(エビデンシング)
・見えないものを見える化しよう!
・どうすれば顧客にサービスの見えないところを意識してもらえるか
サービスの流れやタッチポイントを意識し、うまくサービスの見えないところを意識してもらえるようにすることで顧客満足が高まる場合もある。
5.全体をみる(ホーリスティック)
・大きな視野を持とう!
サービス自体が目にみえなくても、サービスは場所やモノを通して提供される。顧客は、五感で環境を感じている。
・サービスをデザインするときにどの側面を考える必要があるか
サービスのすべてを見ることはできないかもしれないが、サービスが提供されている時間や場所は特に注意してみてみよう。また、サービスには例外的な経験のされ方もあることも頭にいれよう。
マーケティング:人々とつながり、価値を生み出す Lucy Kimbell
サービスデザイン思考は、組織よりも人をみて、関係者とともに価値を共創していく。
・マーケティングの台頭 生産からマーケティングへ、製品から顧客へ
・サービスマーケティング モノからプロセスへ
・マーケティングかデザインか?
デザインは関係者をデザインのプロセスに取り込み、共創する。
サービスデザイナーとはいったい誰か? 基礎
サービスデザイン思考は、超領域的なアプローチであり、異なる分野で取り入られている。これらの分野がすべてではないが、多様性を示している。
サービスデザインの領域
プロダクトデザイン:サービスアプリケーションでプロダクトをつくる
グラフィックデザイン:視覚的な説明を提供する
インタラクションデザイン:インタラクションの連続としてのサービス
ソーシャルデザイン:より良い社会的インパクトをもたらす
戦略マネジメント:なぜ企業は今やっていることをやっているのか
オペレーションマネジメント:効率性の飽くなき探求
デザインエスノグラフィー:日常生活からインスピレーションを得る
サービスデザインはどのように活用できるのか 手法とツール
サービスデザイン思考の道具箱
行ったり来たりの(Iterative)プロセスである Marc Stickdorn
・ステージ1:探求
顧客の視点からサービスの現況をはっきり理解する。
・ステージ2:創造
サービスデザイン思考の特徴は失敗を回避するのではなく、あえて考えう
る多くの失敗を考えていくことである。
・ステージ3:ふりかえり
実際の近い形でプロトタイプをつくり、フィードバックを得る。そのため
に、ロールプレイやストーリーボード、ビデオなどを活用する。
・ステージ4:導入
これまでのステージを踏まえて、どう変化を導入していくかが課題で
従業員の参加と理解がこれまで以上に大事になってくる。
AT-ONE:顧客とともにAT-ONEになろう Simon Clatworthy
・A: Actors Plan 価値あるネットワークでのコラボレーション
・T: Touchpoint タッチポイントを全体として機能させる
・O: Offering Plan サービスの提供はブランドである
・N: Needs Plan 顧客の希望やニーズや欲求をどれほど知っているか?
・E: Experience Plan 驚きと喜びに満ちた経験
サービスデザインのツールにはどのようなものがあるのか? 手法とツール
マニュアルではなく道具箱 どんな組み合わせも可能であり、正解はない。
・ステークホルダーマップ:関係者を書き出し、マッピングする。
・サービスサファリ:サービスの現場に繰り出す(サファリする)。
・シャドーイング:顧客やスタッフの日常に入り込んで観察する
・カスタマージャーニーマップ:顧客とサービスの接点(タッチポイント)を可視化する。
・文脈インタビュー:顧客がサービスを使っている現場でインタビューする
・5つのなぜ:なぜを繰り返し、原因の原因を突き詰めていく。
・文化的調査:顧客の参加や自己記録によって、情報を集める。通常、一定期間をかける。日記のこともあれば、デジカメなどで記録することもある。
・モバイルエスノグラフィー:スマートフォンを使って画像や位置情報などの情報を集めて分析する。
・1日の生活:一日の生活を振り返り、サービスと関係することや関係しないことを考える。
・期待マップ:顧客が何を期待しているのかを書き出す。
・ペルソナ:ユーザーの年齢や職業、性格などを想定する
・アイデア出し:ブレーンストーミングやSWOT分析などでアイデア出汁
・もしも・・だったら:文脈を仮定して、アイデアを考える
・デザインシナリオ:集めたデータ、テキストやストーリーボードなどを組み合わせて、サービスが使われるシナリオを細かく想定し、サービスが使われる場面について議論する。
・ストーリーボード:絵や写真を使って、サービスの流れを表現する。
・机上ワークスルー:レゴや紙などを使って、サービスの流れを机の上に三次元で表現する。セットを作ることで、より議論が活発化する。
・サービスプロトタイプ:サービスエクスペリエンスを仮想的に経験できるようなプロトタイプをつくる。プロトタイプは、会話のこともあれば、モノや図などを使うこともあれば、実際の空間で試されることもある。
・サービス演劇:シナリオやプロトタイプにもとづき、演劇的にサービスを表現する。身体的な感覚や感情をデザインのプロセスに入れるのに役立つ。
・アジャイル開発:開発とフィードバックを同時並行で行う開発のこと。
・コ・クリエイション:様々な立場の関係者にデザインのプロセス参加してsもらって共に創っていくというサービスデザインの哲学のこと。
・ストーリーテリング:顧客の生活からスタッフの経験、サービスの経験まで、課ストーリーにすることによって洞察やコンセプトを共有する。
・サービスブループリント:サービスの流れの局面をユーザーの動き、サービス提供者の動き、バックオフィスの動き、モノの動きなどに分けて確認する。
・サービスロールプレイ:サービスの場面を演じ、アイデアをだす。
・カスタマーライフサイクルマップ:顧客とサービスの長期の関係を図式化し、どどこからどこまでがサービスなのかを表現する。
・ビジネスモデルキャンバス:ビジネスモデルを書き出し、検討し、デザインしていく方法。
サービスデザインの応用 事例
・オランダ経済産業省とデザインシンカーズ社:政府機関のサービスデザイン
デザインシンカーズのプロセス
ステークホルダーマッピングやペルソナ、カスタマージャーニーマップ
などを活用し、オランダ経済産業省のサービス改善の仕組みをつくる。
・マイポリスとスヌーク社:公共機関のためのソーシャルデザイン
スヌークのプロセス
シナリオやサービスブループリント、ペーパープロトタイプ、インタビ
ュー、ストーリーボードなどを活用。
警察を市民がコミュニケーションできるサービスをつくる。
・ハローチェンジとファンキープロジェクト社:就職活動のためのサービスデザイン
ファンキープロジェクトのプロセス
インタビューやワークセッション、シナリオ、プロトタイプなどを活用。
会社と求職者がお互いに利益があるサービスをつくる。、
・UPBCとカーネギーメロン大学:病院のためのサービスデザイン
カーネギーメロン大学のプロセス
テリトリーマッピング、観察、サービスブループリント、患者の旅(ジ
ャーニー)、ストーリーボードなどを活用。
明らかにされたニーズや課題に合わせて、日々の習慣等を変えていった。
病院スタッフのモチベーションを高めたのも大きな成果の一つだった。
・SEBとトランスフォーマー社:銀行のためのサービスデザイン
トランスフォーメーターのプロセス
計画→デザイン→探求→ふりかえりの四段階を経るアクションリサーチ
モックアップ、インタビュー、観察、プロトタイプなどを活用。
新しいサービスに関するウェブやレター、料金を改定。
その結果、八割の申込みという目標を達成
サービスデザイン思考をさらに深く考えるために
ディープサービスデザイン思考
サービスデザイン思考とモチベーション心理学をつなげる
〈モチベーション心理学の立場からサービスデザインを考察する小論〉
・モチベーションとは何か
・自己決定をサポートする哲学としてのサービスデザイン
・モチベーションをジャーニーマップやサービスブループリントに組み入れる
サービスデザイン研究:昨日、今日、そして明日
〈ここ十年ほどのサービスデザイン研究のレビュー〉
・初期の研究 他サービスデザイン的領域が立ち上がっていく。
・現在の研究 サービスデザインの領域を広げる研究や基礎を問う研究
・課題とこれから 理論や手法の確立。成果の評価。
サービスデザインとビオフィリア
〈デザインと言えばモノとなってしまうこと。新しいデザイン概念について〉
・デザイン:モノだけなのか
・機械の自己効率性
・戦略としてのモノ
・デザインの新しいとらえ方
・重要なポイントを貫く論理
・命や生活への愛情と思いやり
付録
著者紹介(23名)
参考文献
索引
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