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Democratic Innovation

9月末に、知人であるWさんの紹介で某市の若手職員の研修プログラムのお手伝いをしました。テーマは、コペンハーゲン市の参加型デザイン。

CIIDに加え、図書館や文化センター、コミュニティガーデン、イノベーションラボ、コワーキングスペース、デザインセンターなど、コペンハーゲン市の参加型デザイン文化を象徴するようなところをピックアップして、連絡をとり、インタビューや見学を行いました。自分も行ったことがあるところもありましたが、しっかり見学し、話を聞いてみると、新しい発見が多く私も学ぶところが多かったです。

一連の研修ツアーが終わって感じたのは、個人から国まで、この国には様々なレベルで「民主的イノベーション」のような考え方が共有されているのではないかという仮説です。

おそらく、彼らは強く意識しているわけじゃないと思います。それでも、歴史や教育や文化に染み込んでいる「民主的」であったり、「参加型」であったり、「個人の尊厳」などの思想の影を感じぜずにはいられませんでした。

日本語にすると、少し日常から離れた専門用語のように感じる「民主主義」が、日常のなかに普通にある感じです。別の言い方をすると「質素」と言えたりもするのですが、デンマークが幸せな国だ言われている裏には、こうした人々の底辺にある考え方に「信頼」や「民主主義」が根づいているからなのかもしれません。

さらに、「平等」だったり「民主主義」だったりが意識にあるといっても、「みんなで仲良く」だけでは生き残れないご時世というのも心得ていて、各セクターにおいて、イノベーションという考え方もそれなりに共有されているようにも感じました。特に公共セクターの職員の意識の高さには目を見張るものがあります。税金が高いとこうなるものなのだろうか、とそのカラクリ(?)をさらにリサーチしたくなります。

民主的イノベーションは、あくまで私個人の仮説にすぎませんが、こうして多くの施設や取り組みを一気に訪問することは、住んでいてもなかなかできることではなかったので、やっぱり取材は面白いなと再確認するとともに、こんな面白い仕事をさせていただきありがたかったです。

参考までに、訪れたところをいくつか書き出してみます。

Copenhagen Institute of Interaction Design
学校の施設を見学。授業内容やプロジェクトについても詳しく伝える。オープンレクチャーにも参加。別日には、日本での仕事経験も豊富なCIID CounsultingのディレクターであるBrianとも懇談することができ、公共セクターのイノベーションについてディスカッションができました。私は、Brianの流暢な日本をはじめて聞けて新鮮でした。

・Norreport Torvehallerne KBH
最近リノベーションされ、にぎわいを見せるマーケット。美味しい食材やテイクアウト、コーヒーなどが立ち並ぶ。

King's Garden
市民の憩いの場。INDEX: Design to Improve Lifeの受賞展示を見に行ったが、見つけられず。。。後で調べるとかなり奥の方でやっていたらしい。

Christiania Guided Tour
現役ヒッピーのおじさんによるガイドツアー。クリスチャニアの歴史からはじまり、自治運営のされかた、ドラックとの戦い(ハードドラックをいかに追放したか)、リサイクルセンター、リサイクル家づくり、など自治区の誇りを感じる濃い内容でした。

Playground
市内に多い子ども向け公園をいくつか見学。
 
Design Society Cafe
Design for Social GoodのブックレットとINDEXのDesign to Improve Liveのブックレットが置いてあり、もらうことができた。カフェとしても、良いつくり。ここで少し過ごすだけでも、スカンジナビアと日本のデザインに、似てるところが沢山あることも気づきます。どっちが真似したのか見分けがつかなくなるほどに。

・ストロイエ商店街
最古の歩行者天国と言われるストロイエを見学。駆け足で、HAYIllums Bolighusなどの店舗もめぐりました。

市立中央図書館
ストロイエから少しはずれたところにある中央図書館も見学。一階のカフェと雑誌、横置き陳列の本が、いい感じで人のよどみと流れをつくっています。

小学校の屋上を借りて、地域の憩いの場になっているコミュニティガーデンを訪問。交通事故で休職中に関わり始めたという20代女性に案内してもらう。自由で、時間の制約もなく、何もしていなくても居られるコミュニティガーデン。いろいろな可能性を感じました。小学校のデザインにも衝撃を受けました。校門も塀もなく、そのまま街につながっている感じです。隣が大きな公園なので、公園との境界も曖昧。かなりオープンなデザイン。

省庁内デザイン事務所のMindlab。このブログでも取り上げたこともあります。2ヶ月〜半年ぐらいのプロジェクトを多様なチームですすめている。プロジェクトの進め方について具体的に聞けたのは面白かったです。デザイン思考はもちろん意識しているが、意識しすぎるわけではなく、調査ではオーソドックスな手法も結構使われているという話が印象に残っています。各方面との意識の擦り合わせに意識を砕いているところもうかがわれました。

ブラックダイヤモンドとして知られる建築。Mindlabのすぐ近くだったので、見学しました。吹き抜けが気持ちの良い建築です。古くからの建物ともつながっており、そのコントラストがまたかっこいいです。勉強するひと、仕事するひと、憩うひと、それぞれが思い思いに過ごしています。

ハッカーズスペース。メイカーズスペース。ここは本物のハッカー、メイカーたちがいて、テッキーな雰囲気に満ち満ちてました。おじさんばっかりで少々むさかったですが、オープンソース的な哲学が徹底していて、ある意味美しいと感じました。

コペンハーゲン駅から電車で10分ほどのValby地区にある図書館や文化センター、ファブラボなどを訪問。職員の方のお話も聴く。ラジコンで遊んでいた14歳の子どもに声をかけて、そのまま彼がリーダーのラジコン大会を開いた話。リーダー(おそらく部長クラス)がリスクをとって失敗する(Strategic Errorsと言っていた)とボーナスがもらえる話などが印象に残りました。大きな組織の柔軟性を高める苦労は、どの国でも変わらないのでしょう。ファブラボやゲームなど、職員の発想や興味を活かした企画も多いようにも感じました。

ファブラボはこの2月からはじまった。若いひとたちが毎日のようにやってきて活用している。レーザーカッターや3Dプリンター、ミシンなどが置いてある。絵画や陶芸のアトリエも隣接していて、そちらはさらに上の世代が中心の模様。

カフェ、コワーキングスペース、ワークショップ、ファブリケーション、等々がうまく混ざり合っている良い意味でラフな雰囲気が魅力。コミュニケーション系(ライティング、電話が中心)、グラフィック系(パソコン、2D系ソフト、会話多い)、建築系(パソコン、3D系ソフト、会話多い)でワーキングスペースが分かれているのが面白かったです。電話部屋もあり。共有ダイニングも充実。ファブリケーションでは、企業スポンサーが付き、毎週のようにイベントが開催され始めている。医療系のハッカソンなどのイベントも。

PB 43
工場跡地再開発プロジェクト。その中のコミュニティガーデンについて詳しく話を聴く。地元住民との交流が印象的だった。ここの取り組みは賞も取っているそう。

カルチャーセンター、図書館、カフェの複合施設を見学。

この他、ルイジアナ美術館や工芸美術館などは、アテンドなしで行っていただきました。某市職員のお二人が、年齢的に近かったのと課題意識が近かったのもあり、毎日のように議論をしました。アイデアスケッチやデジタルストーリーテリング、ビジネスモデルキャンバスなど、いくつかのメソッドを伝えながら、課題整理をしたり、ストーリーの作り方について実習したりしました。

リサーチャー、通訳、エデュケーター、ツアーコンダクター、などなどマルチな役回りを仰せつかって大変なことは大変でしたが、某市職員のお二人が前向きでタフだったので、楽しく過ごすことができました。

最後は、オープンしたばかりの運河沿いのジャズハウス&レストランの、The Standardで打ち上げました。

我田引水になりますが、これまでにあまりないような研修ツアーにできたのではないかと思っています。市役所の若手職員が海外に研修にでて、刺激を受けることができるこの企画は、意義があると思います。ぜひ次につながっていってほしいです(そのためのお手伝いの仕事も少し残っています)。私もこの経験を今後に活かしていきます。

そして、最後にこの仕事をつないでくださったWさんに大感謝です。できれば、一緒に回りたかったです(初めに連絡くれた時は、時間とお金があれば行きたいなとおっしゃっていました)。しかし、この仕事の準備をしている間に、Wさん、あなたは突然、この世から居なくなってしまいました。一番先に土産話を聞いてもらいたかったのに、残念でたまりません。

私は今後もずっと、こういうテーマの仕事をする時には、Wさんなら面白いって言ってくれるかな、なんて考えながら仕事をしていくんだと思います。その意味では、今後ともよろしくお願いいたします。

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