スキップしてメイン コンテンツに移動

投稿

2013の投稿を表示しています

CIID Graduate

Final Project追い込み中。 CIIDを卒業し、日本に帰ってきています。最後は、まさに追い込みでバタバタしていましたが、なんとかカタチにして、発表し、卒業しました。濃密な一年でした。帰国後も忙しくしていたのもあり、まだまともにふりかえられる感じではないのですが、 ちょうど先日、CIIDに関心を持った方から連絡をいただき、いくつか質問に答えたので、それを転用加筆する形で書いてみたいと思います。 というのも、少しでもCIIDに関心を持った方に、学生や研究者、アーティストとしてCIIDに絡んでいただきたいなぁという思いがあるからです。 来年のCIID Interaction Design Program(1年の教育コース)には日本人学生がいないそうなので、再来年は誰かに行っていただきたいです。 質問いただけると、自分で書くのとは違うニュアンスがでてくるから不思議です。Nさん、ありがとうございます! Q. CIIDで学んだことはなにか?マインド的なもの、スキル的なものでもかまいません。 マインド的なところが大きいかもしれません。 小さなスタジオ的な雰囲気のなかで、 20名ほどのクラスメートや講師の人たちと集中的にアイデアをカ タチにしていく訓練をいくつも積めたのが大きな収穫だと思っています 。それは、プロセスを身体で覚えていくこと、 スキルを使いながら学ぶこと、グループダイナミズム、友情など、 いろいろ絡まっていますが、一年経ってみて、CIIDという 場所に対する記憶や愛情が大きいです。どんな学び舎も、この愛校心みたいなのが大事なのかもしれません。 スキル的には、自分にとっては全く新しいプログラミングを学べたのが良かったなと。そして、新しい Adobe系アプリケーションのいくつかにも慣れることができました。客観的に考えるとまだまだ修練が必要だと思っていますが、オンラインコースも充実していますし、今後レベルアップしていけばと考えています。 むしろ、 若くて優秀なプログラマーやデザイナーと一緒に過ごしたことで彼 らの技術や姿勢について理解が進んだことが、 今後そういった技能を持った方々と仕事をしていく上での収穫かなと思っています 。  あとは、 プレゼンなどストーリーテリングもかなり重視されるので、

Democratic Innovation

9月末に、知人であるWさんの紹介で某市の若手職員の研修プログラムのお手伝いをしました。テーマは、コペンハーゲン市の参加型デザイン。 CIIDに加え、図書館や文化センター、コミュニティガーデン、イノベーションラボ、コワーキングスペース、デザインセンターなど、コペンハーゲン市の参加型デザイン文化を象徴するようなところをピックアップして、連絡をとり、インタビューや見学を行いました。自分も行ったことがあるところもありましたが、しっかり見学し、話を聞いてみると、新しい発見が多く私も学ぶところが多かったです。 一連の研修ツアーが終わって感じたのは、個人から国まで、この国には様々なレベルで「民主的イノベーション」のような考え方が共有されているのではないかという仮説です。 おそらく、彼らは強く意識しているわけじゃないと思います。それでも、歴史や教育や文化に染み込んでいる「民主的」であったり、「参加型」であったり、「個人の尊厳」などの思想の影を感じぜずにはいられませんでした。 日本語にすると、少し日常から離れた専門用語のように感じる「民主主義」が、日常のなかに普通にある感じです。別の言い方をすると「質素」と言えたりもするのですが、デンマークが幸せな国だ言われている裏には、こうした人々の底辺にある考え方に「信頼」や「民主主義」が根づいているからなのかもしれません。 さらに、「平等」だったり「民主主義」だったりが意識にあるといっても、「みんなで仲良く」だけでは生き残れないご時世というのも心得ていて、各セクターにおいて、イノベーションという考え方もそれなりに共有されているようにも感じました。特に公共セクターの職員の意識の高さには目を見張るものがあります。税金が高いとこうなるものなのだろうか、とそのカラクリ(?)をさらにリサーチしたくなります。 民主的イノベーションは、あくまで私個人の仮説にすぎませんが、こうして多くの施設や取り組みを一気に訪問することは、住んでいてもなかなかできることではなかったので、やっぱり取材は面白いなと再確認するとともに、こんな面白い仕事をさせていただきありがたかったです。 参考までに、訪れたところをいくつか書き出してみます。 ・ Copenhagen Institute of Interaction D

Industry Project 1st

9月の前半は、Industry Projectでした。企業から案件をいただき、それに取り組むというプロジェクトです。本格的に守秘義務があるので、今のところ詳しい内容は書けません。もしかしたら、数ヶ月後にはオープンにできるかもしれません。去年のIndustry Projectはオープンになっているので、 こちら から見ることができます。 授業のプロジェクトでもほとんどの場合、課題設定がされるのですが(Briefと言われます)、クライアントがつくことでよりリアルな仕事に近くなります。発注側とコミュニケーションしながら、かつこちらの能力や残り時間を考えながら最終成果物を仕上げていく緊張感は、これまでとはまた少し違う緊張感でした。 今回は、プロジェクトの中身だけではなく、良いところも悪いところも含め、プロジェクトマネジメントの点でいろいろと考えさせられることが多かったです。 明日から、もう一つのIndustry Projectなので、その前に久々の更新でした。

イノベーションラボとしてのMindlab

Powering collaborative policy innovation: Can innovation labs help? デンマークの省庁内フューチャーセンター(このペーパーでは、イノベーションラボを自称しています)として知られている MindLab の成り立ちについて書かれた論文をみつけたので読みました。来月、訪問する予定なので、その予習も兼ねて。 Mindlabは元々 サイト での情報発信がしっかりしていて、イベントにも参加し、いくつか出版物も読んでいたので、ある程度知っていたつもりでしたが、この論文は設立の成り立ちやその後の変化などが詳しく書かれています。最初から今のブランドを築いたのではなく、それなりの歴史と紆余曲折、そして戦略があったからなのだなということがわかります。 特に、組織としてはこの10年でいろいろと試行錯誤の上で変わってきたのだというところがよくわかりました。以下の分類が分かりやすいと思います。いわゆるフューチャーセンターのような活動していた第一世代から、よりプロジェクトベースの活動をするようになった第二世代(2008年以降)、そして今は、組織の一部というよりコアの部分にイノベーションを据える第三世代をめざしているようです。 しっかりしたコンセプトを持って、トップマネジメントを巻き込み、かつ状況に合わせて変化したきたMindlabのすごさは、的確で柔軟な現状認識と自己認識だったということも感じました。官僚制度の特性、マネジメントの問題、取り上げる課題など、慎重に検討しつつ挑戦というリスクを取ってきたようにみえます(少なくともこの論文の論調としては)。2008年に大きな変化があって、さらに2012年(この論文の執筆時)にも次なる変化について自己点検と戦略の見直しを行っているとのことです。 各国の研究者や実践家にも有用な資料として、こうして自らの歩みをまとめて発表しているところにも、本気でパブリックサービスを変革するんだという意気込みを感じます。 オーストラリア政府もMindlabにインスパイアされたイノベーションラボを設立予定だそうです。 省庁内外にも活動が知られてきた今後が、さらなるMindlabの本領発揮なのかもしれません。

サービスデザインのパイオニア

先週は、サービスデザイン会社の先駆けと言われている Live|Work のファウンダーでもあり、現在はMethodという会社でPrincipalをしている クリス が来て、いろいろと議論やアドバイスをしてくれました。 週の途中で、インフォーマルなレクチャーもしてくれました。サービスデザインをはじめたパイオニアでもあるので、どんな話をするんだろうと思っていたのですが、サービスデザインという言葉や手法に関しては、むしろ批判的なスタンスを持って仕事をしているようです。一応、念のために確認しますが、否定的ではなく批判的です。以下、いくつか簡単に紹介します。 例えば、サービスデザインの手法について。サービスデザインの仕事のプロセスは3つとか4つとかに分けて言われることが多いけれど、ほんとにそれでいいのだろうか、と話します。インサイトを得て、デザインし、それを現場に落とし込む。そういったサイクルをつくれば、仕事の分担もしやすいし、何よりお金が取りやすい。でも、それが本当に効率的に良いアイデアを生み出す方法なのかと。むしろ、リーンスタートアップのようにぐるぐると仮説と実践を即座に繰り返して行く方がいいのではないかと。 また、サービスブループリントについても批判の目を向けていました。もちろん、サービスの流れをマッピングして可視化することで見えてくる事も沢山ありますし、有用なところが沢山あります。でも、それってあくまで想定的なブループリントでしょと。おっしゃる通り、青写真です。 もっと実際のデータに基づいたインサイトの引き出し方が沢山あるではないか。無料のウェブ解析ソフトを使うだけでもいろんなことがみえてくるはず。あるいは、動きのあるブループリントだってできるじゃないかと。 かなり粗いまとめですが、エスノグラフィーとブループリントというサービスデザインでは中心的な手法について、いくばくかの批判的な意見を持っています。去年のサービスデザインのカンファレンスであるNEXTの講演でも同じようなテーマを話しているので、英語が大丈夫な方はご覧ください。まだ再生回数が50回と、少ないです。こちらです↓。 クリスは元々はプロダクトデザインを学んだそうです。それでも、今の工業製品みたいなものを自分は作りたいのか、大量生産して大量廃棄されるも

Processingを夏休みの自由研究にするのなら

http://processing.org/ 絵を書いたり、マイコンを制御したりすることができるクリエイティブプログラミング言語として広く使われている Processing 。もっと使えるようになりたいなと、マイペースで勉強を続けています。しかし、ちょこちょことコードをいじっていると、こういうものは小さい頃から触れているに限るなと思うわけです。 ということで、もし今、自分に小学校5年生ぐらいの子どもがいて、今夏休みの自由研究を一緒にやらなくてはならない状況になったとしたら・・・。そして、さらにProcessingをテーマにするというハイリスクな選択をしたらどうなるだろうかということをふと考えました。 この選択はかなりハイリスクです。が、万が一うまくいった場合にはメリットもあると考えられます。 メリットとしては、 ・親子で新しいことに挑戦できる。(特にプログラミング初心者の親御さんの場合) ・子どもがプログラミング言語に親しむことができる。 ・子どもがプログラミングを通じて、英語の世界にも興味を持つようになる。 ・「お父さん(お母さん)すごい」と尊敬される。 リスクとしては、 ・結局、夏休みの自由研究にならない。時間だけが浪費されていく。 ・子どもがプログラミングも英語も難しすぎると思い、学年があがってもどちらにも興味を失ってしまう。 ・「お父さん(お母さん)、自分でもよくわかってないのにひどい。」と蔑まされる。 などが考えられます。教える側がダメになるリスクも、教えられる側がダメになるリスクもあるので、大きな賭けと言えるでしょう。 しかし、いろんな可能性を広げてくれるプログラミング言語に少しでも取り組んで、何かしらの達成感を持つことは、悪くないどころか10年後の世界で仕事をし始める子どもたちにとって、もしかしたら将来大感謝される自分史的事件になることも大有りです。 では、このハイリスクなチャレンジに興味を持った場合、何をすれば良いのでしょうか。ここでは、特にプログラミングの知識があるわけではない親御さんを想定します。 まずは、少しばかりProcessingを勉強してみる必要があります。日本語で勉強できるサイトとしては、ドットインストールの動画がオススメです。

図書館のサービスデザイン

ここ2週間は、サービスデザインの課題のため現場にでていることが多いです。新しい環境を観察できるので、現場は面白いです。今回の現場は主に図書館です。図書館のサービスを観察し、サービスの改善あるいは新しいサービスを提案するというもの。 デンマークに来てから、コペンハーゲン市内の図書館に何度か訪れたことはありましたが、ここまで頻繁に通い、いろいろとプロトタイピングを行い、ゲリラインタビューを行っていると、より深く図書館、そして図書館を成り立たせているデンマーク社会の実態も見えてくるような気がします。 サービスデザインのリサーチはどちらかというと難航しているのですが、それはさておき図書館に通うなかで感じたことなどを書いてみます。 私が通っているのは、コペンハーゲン市の西側にあるValbyという地域の図書館です。こじんまりとしたこの図書館は、ちょっとした前庭付きの古い建物を改築した造りなのもあって、雰囲気の良いザ・地元の図書館です。 一番良いなと思ったのは、貸し出しはほぼ自動化されてて、それ以外の探したい本だとかそういうことを相談できる図書館員に接しやすいようなつくりになっているところです。 入り口のところにカウンターがあるのですが、それは貸し出しのカウンターではなく、行政書類の申請ができるようにと数年前からはじまった市民サービスのカウンターです。 貸し出しはほぼ自動化された機械のみ。図書館員は小さなデスクにいることが多く、気軽に相談できます。 夏休み中の10歳くらいの女の子が一人で本を探しにきて、図書館員(子ども専門)と一緒にじっくり本を探している様子は微笑ましく、ぜいたくで有意義な税金の使い方だなと感慨深かったです。私自分は、幼い頃地元の図書館に行く習慣はなかったのですが、デンマーク人の友人に聴くと、すべからく図書館は自分の庭みたいなところだったと話してくれます。 きくところによると、数年前からコペンハーゲン市の図書館は子ども向けのサービスに力を入れているらしく、親子で楽しむ場所も小学生がくつろげる場所も大人と同じぐらいの面積をぜいたくにつかって用意してあります。午後から夕方にかけて、絵本や本を選んだり、読み聞かせをしている親子や家族がぽつぽつと訪れてきます。お母さん同士の出会いの場でもあるようです。 そして、最近始まっ

どうしてタンジブルなのか?

Tangible User Interface、略してTUI(チューイー)のセッションが終わりました。今週は、この数ヶ月のプロジェクトをまとめるドキュメンテーションの週です。 あっと言う間の4週間でしたが、コンセプトをカタチにしていくのがいかに難しいかを実感しました。その分、レーザーカッターに親しくなったり、ボールペンの驚くべき精巧な仕組みに触れたり(だから、どのペンも日本製ばかりなのかと納得)、つくる力もついたと思います。同時に個人的にもっと力をつけたい部分も見えてきました。 今回のテーマは、Tangible User Interfaceでした。Tangible の語源はラテン語の「触れることができる」です。デジタル全盛の時代にTangibleを意識する意義はどこにあるのでしょうか。 ひとつは、ビジネスチャンスという経済的意義があるようです。最後のプレゼン時に外部からゲストでやってきた専門家の方が、「デジタルからアナログという単純な流れではない。モバイル端末は飽和状態で、市場は次を求めている。これからは、モノにデジタルが入り込んでいく。アナログ的なタンジブルなインターフェースに戻るように思うかもしれないが、デジタルが融合していくことは避けられない流れだ。」というようなことを言っていました。 そして、もうひとつは文化的意義です。これも最後のコメントで、担当教官のVinayが「TUIはお金にならない。お金儲けしたければ、アプリを作った方がもっと簡単だ。でも、これから社会でデザインされるTUIがどんなインパクトを社会にもたらすのか、どんな文化をつくっていくのか。それはバンガローのプログラマーだけが考えることではなく、インタラクションデザイナーが真剣に考えなくてはならないテーマなんだ。」というようなことを力説していました。 大げさかもしれませんが、彼の言葉のなかに、少し未来のモノやインタラクションを考えながらプロトタイプしていくことの意義を感じました。 以下が、今回のプロジェクトの様子です。プロジェクト全体の紹介は こちら (他のプロジェクトは週末にかけてアップされる予定です)。

Tangible User Interfaceをつくる

MIT Tangible Media Group ブログ更新ご無沙汰してしまいました。 CIIDは、Tangible User Interfaceの4週間のセッションがはじまって2週間がすぎました。ちょうど3週目がはじまったところです。 このセッションのテーマは、「Re-telling Time」です。時を伝えるものといえば、時計が典型的ですが、Tangibleかつ新しい方法で時を伝えるプロダクトを作るというのが課題です。 1週目は、月曜日から水曜日までは、リサーチやインタビューを重ねながらグループで議論を深めました。私たちは、日々、時間に追われたり、迫られたりしているわけですが、時間について深く考えることは意外と少なかったりします。時間についてのインタビューは、その人の時間の過ごし方から哲学まで、生き様がよく現れていて面白かったです。 1週目の終わり土曜日もつかってにプロダクトデザインを専門とする Umeå Institute of DesignからきてくれたJasjit Singhのワークショップ、 2週目に入ってからは、プロダクトデザイナーでもあり、リサーチャーでもある Richard から、プロダクトをつくる時の考え方や模型づくりについてレクチャーをうけながら、プロトタイピングをすすめていきました。 コンセプトのブラッシュアップも同時に進めるのですが、議論やスケッチだけで話し合うよりも、3次元のカタチが加わることで、より具体的に考えられたり、逆に混乱が起きたりと予想外のことが起きるのが新鮮です。グループごとにコンセプトとモックアップをプレゼンしてとりあえず二週目終了。 今回のセッションは、ちょっと前のMotor and Musicのセッションにも近いものがありますが、よりオープンな課題なので自由な反面、議論し続けているとコンセプトがまとまらなくなる危険が常に伴います。 なので、できるだけカタチに落とし込んで、実際に使われる場面やケースに引き寄せながらグループ内でディスカッションを進めていくように気をつけます。グループダイナミクスの「山あり谷あり」は毎回のことなので慣れてきましたが、毎回、テイストだったり、勘違いだったり、コンセプトの善し悪しだったり、いろんな紆余曲折があります。幸いなことに、2週間経ち、我がチームも

未来のためのエビデンス

先日(といっても、もう2週間以上も前に)参加したレクチャーで語られた公共セクターにおけるエビデンスの話が面白かったので紹介します。 話を聞きに言ったのは、NESTAのディレクター、Geoff Mulgan氏。NESTAは、人々や組織の良いアイデアをかたちにするのをサポートするイギリスの独立系シンクタンクです。 "Nesta is an independent charity with a mission to help people and organisations bring great ideas to life." 私がGeoff Mulgan氏について初めて知ったのは、数年前。Australian Center for Social Innovationという オーストラリアのソーシャルイノベーションセンター のウェブサイトをみていた時でした。この団体の立ち上げに、Mulgan氏が関わっていました。そこから彼の経歴をみて、NESTAだけではなく、 Young Foundation のディレクター、 DEMOS というシンクタンクの立ち上げ、ナンバー10(イギリスの政治の中枢)のアドバイザー、 Studio School 、 Action for Happiness など、さまざまな変革を起こしてきた人だということがわかりました。中でもStudio Schoolの TED talk はインパクトがありました。それから、いつか会ってみたいと思う一人になっていました。 その彼がコペンハーゲンのMindLabでモーニングレクチャーを行う。しかも無料。さらに、コーヒーとクロワッサン付きということで参加しないわけにはいきません。 レクチャーは、朝の8時半から。MindLabには、朝からにも関わらず役所関係の方、NPO/NGO関係の方、アカデミズムの方など、50名ほどのひとたちが集っていました。レクチャーのタイトルは、"Policy into practice: from projects to systems"。実践的な政策、意義のある政策を構想し、実践していくために必要なエビデンス(根拠)についての話が中心でした。 Mulgan氏はビデオでみていたのと同じ柔和な感じのひとで、話も聴きやすかったです。私

ニューヨーク EYEBEAM でのレジデンシープログラム募集中

ニューヨークのArt + Technology Center の EYEBEAM でレジデンシーの募集があるそうです。募集は二種類あり、ひとつは、Open Call Residency "What is most important now?"(「今、一番重要なことは?」) 。もうひとつは、Public Knowledge Collaboratie Residency(「公共の知識」)。 先日、EYEBEAMのひとの話をきいたのですが、アーティストもテクノロジストもアカデミックもいて、ミュージアムとファブラボとワークショッップが混ざり合ったような超超領域的な場所のようです。 それぞれ締め切りは6月中。詳しくはウェブをご覧ください。 -- The general Eyebeam residency call has a deadline of June 14, only 10 days from now. We've changed the format a bit: "Eyebeam is throwing open its Residency program to a single line of inquiry: what is most important now? We are asking you -- the digital creators, hacker artists, creative technologists, instigating curators, researchers and cultural producers -- what are the developments that are most in need of support?".   -- Eyebeam has also launched a collaborative residency program with Public Knowledge, a public interest advocacy organization in Washington, DC that seeks to ensure that copyright law and communications policy

お天気アプリの "Partly Cloudy"

PartlyCloudy というアプリがあります。お天気アプリで結構売れているアプリだそうです。 このアプリをつくった Raureif というクリエイティブコンサルのFrankとRimmが中心となってGraphical User Interfaceの授業を受けています。デザインやタイプフェイス、ロゴなどの話をはさみつつアプリのデザインを作り込んでいくという内容です。 先日あったOpen Lectureでは、彼らが開発したPartlyCloudyの話が中心でした。何気なくつかっているアプリにも意図と意匠が込められているのだということを再確認。 このアプリのポイントは、デザインにこりすぎたアプリと天気情報をつめこみすぎたアプリの中間を狙ったところにあるそうです。そう思ってみてみるとなるほどとも思えなくありません。 時計の針を動かすように天気予報をみることができる魅力的なユーザーインターフェースに適度な情報量を盛り込んであるので、使いやすいし欲しくなる。 iPhoneを持っていないので使用感がわかりませんが、使い勝手も良いのかなと思います。日本でも結構な数が売れているようなので(日本で売れるというのはデザイナーにとって一生に一度経験したいことだったから嬉しいとも言っていた)持っている方いらっしゃるかもしれません。 彼らの別の仕事である OECDのBetter Life Index も良くできてます。

公共サービス領域でのデザイン手法の活用

先日、MindLabをおとずれた時にもらってきたディレクターのChristian Basonの小論文"Public Managers as designer: Can design-led approaches lead to new models for public service provision?"を読みました。どうやらこの リンク先 の論文(DESIGNING CO-PRODUCTION: DISCOVERING NEW BUSINESS MODELS FOR PUBLIC SERVICES)の内容とほぼ同じです。 この論文では、デザイン手法を用いた公共サービス改革の事例と関係者インタビューがまとめられています。デザイン手法のサービス改革においては、パブリックマネジャーが、トップダウン的な専門家や市民を助ける人といったマインドセットからファシリテーターに変わっていくところがひとつの肝のようです。特に、デンマークの事例は、論文に取り上げられた事例や現在取り組まれている現場に話を聴きにいきたくなりました。 公共サービス領域は、私も少し近くでみさせてもらう機会がこれまであったのですが、デザイン思考的なツールや考え方でもっとクリエイティブになるように思います(かつ成果が上がるというのがBasonの主張)。デザイン思考や参加型デザインの手法は、むしろ民間より公共サービス部門の方がインパクトが大きいのではないかと思ったりもします。 論文の最後に、パブリックマネジャーのマインドセットを変えるにはどうしたらいいのか、果たしてユーザー(市民)はCo-Productionを望んでいるのか。などの今後の課題なども箇条書きされていました。課題もしっかり共有してくれるのが論文の良さです。 公共サービス領域でのCo-production。まだまだこれからの分野のようですが、着々と成果や実践者が増えているようです。 MindLabからは、Co-Productionの事例短編集も最近出版されていて、こちらももらってきました(ウェブでも ダウンロード可能 です)。

未来のドアはどんなデザイン?

PLANK(スイッチ) Motors and Musicの1週間のセッションで、 Motors and Music Platform をつかったプロトタイプをつくりました。このプラッフォームは、未来のプロダクトやインタラクションを考えるためのツールだそうです。お題として与えられた機能は、主に二つ。モーター付きスライダーと古いハードディスクドライブを改造してつくられたスイッチです。スイッチの方は、開発者の名前から「 プランク 」と名付けられています(リンク先は、プランクについての初期の論文です)。 スライダーもスイッチも、ハプティックな感覚をプラミングで付け加えられるところが味噌です。また、スライダーやスイッチそのものの動きやハプティックな入力(感触)に合わせて、音を制御することもできます。 ボタンやタッチパネルといったインターフェースは、現在のプロダクトの主流を占めているわけですが、近い将来、よりハプティック(触覚的)なインタラクションが導入されていく可能性があります。 例えば、近い将来のドアは、今とは違う感触、今とは違う音が鳴るものになっているかもしれません。 さて、このプラットフォームを使ってどんなデザインを生み出すか考えなくてはらなりません。どんなシチュエーションで、どんなインタラクションやどんなサウンドを生み出すかということを考えるとなると、それなりの数の選択肢になっていきます。 与えられた時間は、1.5日。まずは、今回のチームメートとコーヒーを飲みながら、アイデアだしとスケジューリング。アイデアをだしきったかなというところでアイデアを絞りこみ、さらに作業の要素を洗い出し、それをつぶすようにトライ&エラーを繰り返しながら進めていきました。 私たちのプロトタイプは、天気の情報のインプットを想定して、そこから感覚と音を生み出すプロダクトになりました。今回のプロトタイプはもう少し洗練させていく予定です。また改めて紹介したいと思います。 プロトタイプはできたものの、まだこのテーマに関する理解は道半ばな感じです。今後もMotors and Musicの意味や可能性について引き続き考えていきたいと思っています。

間のあるプレゼン

デンマークの昔の医学学校のレクチャーホール ここ数ヶ月、何かとプレゼンの機会が多い生活を送っています。しかし、だからといってプレゼンの力が急激に上がったかというとそういうわけでもありません。プロジェクトを時間内に終わらせることに力を使い果たして、プレゼンがイマイチになってしまうこともあります。クラスメートのプロジェクト発表をみていても、せっかく内容が良いのだから、もっとうまくプレゼンすればいいのにと思うこともあります。 ということもあってか、一日だけのプレゼンのワークショップがありました(たまに行うそうです)。いまどき、プレゼンについては、ちまたに情報があふれていますし、ありきたりなTipsを言われてもそれほど心動かない「ちょっと生意気な子」的なマインドセットの方が多いと思うのですが、英国出身元教師のコペンハーゲン在住の講師は、その辺りもわきまえていて、オーディエンスの反応を見ながら、即興的に演習を進めていました。 面白かったのは、英語がうまい人であっても、抑揚をつけるだけでかなり伝わる話し方になるところでした。特に頭が切れて、いつもはスピードにのって話すクラスメートがゆっくり話しだすと、そこにまた別の人格が現れたんじゃないかと感じられたのには驚きました。ネイティブスピーカーにも上達の余地がありまくるのです。日本人による日本語でのプレゼンだって上達の余地がありまくる場合が多いのですし、これはちょっと考えれば当たり前のことなのですが、目の前で変化を見せられたので印象に残りました。 英語を母国語としない自分にとっては、まだまだだぞという叱咤にもなりましたし、準備をすれば(あまり準備をしてこなかった)ネイティブに負けないプレゼンができるんだという自信(?)にもなりました。 一段落を10分ぐらい練習してから発表するというエクササイズをしたのですが、 ・声の大きさを調整して、抑揚をつける。 ・大事な単語の前にちょっとだけ間をあける。 ・比較や対比などをわかりやすく伝える。 などのテクニックを、少しだけ体得できたように思います。これは、ほとんど演劇です。今後も時間をつくって、少しでも話し方のバリエーションを増やしていきたいと思います。 うまい英語のプレゼンといえば、Lord Ken RobinsonだよなぁとTEDのペー

コペンハーゲンにきて4ヶ月

CIIDにきてから4ヶ月がたちました。先々週は、これまでのプロジェクトをまとめる週でした。主に、プロジェクトの要約をし、場合によってはプロジェクトの紹介動画をまとめました。納得のいくもの、いかないもの、いろいろありますが、この4ヶ月を振り返る良い機会になりました。 この4ヶ月を簡単にふりかえってみようと思います。 − モノをつくる手 CIIDでは、常に何かをつくっています。パソコンにむかってつくる場合もありますが、模型をつくったり、スケッチをしたり、手を動かしていることも多いです。レーザーカッターで立体物をつくることも、電動の木工機械を扱うことも、特別なことではなくなってきています。 CIIDに行きたいと思った理由のひとつが、自分にまだモノをつくる手があるのかどうか確かめたかったのがありますが、今では自分にはモノをつくる手があるのだとうことを実感しています。むしろ、「モノをつくる手」がどうだとか、大仰に考えていた自分がおかしくもあります。レゴ、工作用紙、ミニ四駆、自転車いじりにいそしんでいた少年時代以降、どうして手でモノをつくらなくなってしまったのかということについて疑問に思うほどです。 ほとんどの人が言語をあやつるように、モノをつくる手は誰にでもあります。ただその環境があまりにも乏しい。そんなことも考えるようになりました。美術や図工の時間を大事にする動きや ファブラボの推進 には大賛成です。 − プログラミング 主に Processing というプログラミング言語を学んできました。 Arduino という電子工作を動かすための言語もProcessingとほぼ同じです。 プログラミングの専門家にならずとも、Processingぐらいの入門的な言語を知っておくと、図像を動かしたり、電子工学的にモノを動かしたりといったことができるようになり、デザインや表現の幅が広がります。モノとモノを関連づけたり、映像表現に活用できるように、もっとプログラミングのスキルをあげていきたいところです。 また、モノをつくる手と同じことですが、Processingはおそらく小学校高学年ぐらいからでも遊べる言語なので、もっと多くの人たちが若いうちから触れられるようになったらいいなと思うようになりました。英語圏だとProcessingのサイトはもちろん、 Dani

Experimental Imaging

MattとTimoによるExperimental Imagingのセッションの一週間。少し前のInformation Designでもお世話になりました。この二人は、教える内容もさることながら、佇まいとか話し方、アドバイスの仕方など学ぶところがたくさんあります。数年後はこんな感じのおっさんになりたいなぁという憧れのコンビ。二人で掛け合いながら、個人的な思い出や参考映像を見せながら進めていくやり方もグッドです。 Experimental Imagingのテーマはまさに実験。 カメラをつかって、できるだけExperimentせよ!というのが目標です。さらに、なんでも実験すればいいというのではなく、"Making Invisible Visible"が課題です。Making Invisible VisibleはTimoのこだわり(研究課題)でもあり、デザイン過程においてもVisibleにするのかInvisibleにするのかというのはひとつのポイントでもあります。 一週間の流れをざっと説明すると、月曜日は静止画についての課題(Brief 1)、火曜日、水曜日は動画についての課題(Brief 2)、木曜日、金曜日はさらなる課題(Brief 3)という流れでした。どれも2人組で行います。 Brief 1は、 見えないものを見える化する写真を撮る。見えないものとは・・・というところでいろいろな解釈もできますが、露出を長くしてLEDライトを持って走る様子を撮ったり、ボタンを転がして瞬間写真を撮ったり、とにかく実験しました。私のグループが特に時間を使ったのは、水に関する実験。噴水の写真を撮ったり、自分たちで水にモノを落としたり、ストローで波をつくったりして、それを様々な設定で撮影しました。 回転しているボタン シャッタースピードや露出など、 知っている人は知っていることですが、こうしていろんな設定で実験する機会ってそんなにはないと思います。数時間、カメラをつかって身の回りのモノやコトで遊び倒すだけで、カメラとの友達度がかなりアップするはずです。 Brief 2は、同じテーマでストップモーションを使った映像をつくること。Dragonframeというソフトを使いました。 いくつかのトライ後、 もうひとつ面白くないなぁと思っていたと

もやい結び King of Knots

今週はPorfolio Weekということで、これまでやってきたプロジェクトのまとめをしています。週末には、公開される予定です。 ということで、いつもよりリラックスしたムードなのですが、それぞれのパソコンの動き方は結構激しいようです。 IDDもすでに2週間ほったらかし。 先々週は、Human Harpのセッションの続きでした。その前の週とはまた少し違う角度から、Human Harpの活用についてのプロトタイピングが続きました。 僕のチームのテーマはパペット。操り人形です。これまで、パーツごとにプロトタイピングをしてきたグループからそれぞれメンバーが集まり、ダンサーや歩行者がパペットのような動きを実現できる装置を開発します。 糸がでてくるメインのモジュールとの接点に磁石を使うチームがぼくらのチームはボタンを活用する方向ですすめていきました。そして、水曜日にはミシンをひっぱりだし、裁縫がメインになっていきました。 そして、個人的に今回の発見のひとつは「ひもの結び方」。知っている人は知っているのだと思いますが「もやい結び」にしびれました。英語ではKing of Knotですよ。 King of Knotも多いに活用され、できたのは・・・ポートフォリオにこうご期待。

ブルックリン橋で音楽を奏でるHuman Harp Project

先週から、アーティスト(発明家?)の Di Mainstone が中心となってすすめられている Human Harp Project をテーマにしたPerformative Designのセッションに取り組んでいます。 このHuman Harp Projectは、今年で130周年を迎えるニューヨークのブルックリンブリッジ上で、人間がハープを奏でるように音楽を紡ぎだすプロジェクトです。なんでも、ブルックリン橋をわたっている時に思いついたそう。 作品づくりのプロセスもユニークで、Di Mainstoneがここ数年教えているQueen Mary University of Londonを皮切りに、CIID、ITP、Columbia Universityなどでのワークショッップや授業を通して、内容が深められていきます。 セッションでは、ダンサーや通行人が橋の上で音を奏でるためのデバイスや関わり方についてプロトタイピングをしています。 課題というよりも、ホンモノのプロジェクトの実験なので、これまでのセッションとはひと味違う体験です。 デンマークの百円ショップともいえるTIGERで買い集めたモノを組み合わせてプロトタイプしたり、レーザーカッターで試作したり、ダンサーに実際に使ってもらってビデオプロトタイプしたり(そのためのプロップをつくったり)、小人数のチームで話し合いながらめまぐるしく時間がすぎていきます。 イギリスで作られた基本デバイスの設計図を元に、デンマークで複製するところなどは、ファブラボ的です。(僕たちがつくるプロトタイプも、レーザーカッターなどをつかったMakeabilityが前提条件として求められています) プロのダンサーに関わってもらいながらのプロトタイピングも「こんな動きをするのか」「こんな使い方をするのか」と思った以上の面白さがあります。 大きなプロジェクトの一部を担える面白さもありますが、なにより僕自身はアーティストの気合いと情熱に感じ入るところが多いです。特に、他人に委ねてアイデアを育てていくところは、懐の深さがなくてはなかなかできないと思うのです。 このセッションは、明日からもう一週間続きます。