スキップしてメイン コンテンツに移動

ドキュメンタリー A Normal Life

DANISH DOCUMENTARYによるドキュメンタリー映画『A Normal Life』のプレミアにいってきました。ちょうど前日に学校のメーリングリストに、無料でみられるとの情報が入ったのです。

映画は、白血病のお子さんがいる家族のお話。完全ネタバレですが、入退院を繰り返し、移植し、うまくいったと思ったらまた病院にもどり、なんとかふつうの生活をとりもどすというあらすじです。

デンマークにいるのだから、デンマーク人がいくところに行こうと思いつつなかなかできていなかったので、今回は大きな第一歩です。土曜日の朝の試写会。映画館はまさにデンマーク人ばかり。ストロイエにはいってすぐの映画館は、レトロな感じで雰囲気がよく、奥でカップケーキとコーヒーとジュースが配られててアットホームな雰囲気でした。

こういうところに、デンマークってこじんまりとした国なんだなぁということを感じます。もちろん、良い意味で。

内容はもちろん良かったのですが、今回映画をみながら考えていたのは、映像の持つ力のことです。ポジティブな意味においても、ネガティブな意味においても、特にドキュメンタリーは映像をつくること自体が、撮影対象に影響を与えると思います。

映像に限らず、取材という行為でも、取材対象に少なからず影響を与えます。映像は切り取る行為にも主観が入りますし、対象は見られているということだけで意識が変わります。(ふだんしない化粧をするとか)

カメラというと、どうしても傲慢なマスコミのイメージがついてまわり、こうしたカメラのネガティブな面が取り立てられることが多いですが、ぼくが映画を見ながら考えていたのは、カメラが入ることでポジティブな影響もあるんだろうなぁということです。

取材が入っていること。カメラを通して記録している人がいてくれること。それが、家族の助けにもなっていたりもしていたのかもしれないということです。(家族自身が撮影する場面も多くありました)

ふつうの生活を取り戻した家族にとって、ドキュメンタリー映画を通して、その一部始終をふりかえることで、またそれぞれの現在や未来に影響を与える部分も大きいのだと思うのです。

今回の映画のなかでは、白血病を持つ女の子と同い年の双子の姉妹との対比が頻繁に描かれていました。おそらく、その元気な方の女の子にとって、自分が置かれていた立場、親との関係や姉妹との関係を考えていく上で大きな意味を持つ作品になっていくのだと思います。

お母さんがどんな思いで病院にいっていたのか。どんな悩みを抱えていたのか。そんなこと家じゃ言わないですし、子どもに想像しろというのも難しい話です。こうしてドキュメンタリー映像になっているからこそ、「ああ、そうだったのか。」と感じられるところもあると思うのです。

そんなことも考えましたが、総じて良い映画でした。(と、唐突のまとめ)


(メモ)
・挿入映像はなかなか難しい。病院のガラス窓に貼ってあるシールにフォーカスしたり、ずらしたりする映像がいくつか入っていたが、場面切り替えという意味以上にはなっていなかったような気がする。病院の建物のショットは、なかなか良かった。
・音楽重要。お母さんがランニングする映像がところどころに挿入されている。良い映像。でも、個人的には音楽が強すぎる感じがした。お母さんの折れそうだけど強い気持ちを表すためだったのか。それとも、デンマーク人の嗜好からするとあの選択なのか。
・ズームアップ。感情や表情が大写しになるだけで、状況を伝えることができる。女の子の絶望状態や健康状態がよく伝わってくる。
・運転中の映像。できるだけ自然に個人の思いを話す場所としてほとんど唯一なのかとも思った。

コメント

このブログの人気の投稿

デンマークでインタラクションデザインを学ぶことに

こんにちは。新しいブログを立ち上げました。このブログでは、インタラクションデザインをテーマにした記事を書いていきます。 インタラクションデザインといっても、様々な領域が関わり、何がインタラクションデザインなのかということでも一苦労なのですが、まずは私がデンマークでインタラクションデザインを学びはじめたということで、インタラクションデザインな日々を綴っていきたいと思っています。 すでに、インタラクションデザインデイズという名のもとに、 Facebookページ と英語ブログ(英語の練習も兼ねて。まだ半公開状態。)を立ち上げたのですが、日本語のブログも立ち上げることにしました。もとはといえば、イリノイ大学での学びを共有していらっしゃる Design School留学記ブログ にインスパイア―されたのが発端といえば発端ですが、自分の学びの記録と共有、思考実験として有用に違いないだろうというのが大きな動機です。 ということで、まずは、この1月からお世話になっている Copenhagen Institute of Interaction Design 、通称CIIDについて、少し紹介します。 CIIDは名前の通り、インタラクションデザインをテーマにした機関なのですが、ふつうの大学とは少し少し違います。CIIDは、大きく分けて、コンサルタンシー、リサーチ、エデュケーションの3部門からなります。私がお世話になっているのがエデュケーション部門(中の人は、Interaction Design Program=IDPと呼んでいるよう)です。 Kolding School of Design という学校と提携することで学位もだせる仕組みになっているようです。 もともとは、イタリアにあった Interaction Design Institute Ivrea の関係者がデンマークで立ち上げた機関です。 といっても、4階建ての建物に3部門すべてが収まっている小さなコミュニティです。学校も年間で20名のみ。学校も専任のスタッフもいるけれど、多くは外部の講師や専門家がやってきてワークショップをするというもの。コンサルタンシーとリサーチのスタッフも少数精鋭と言う感じで、2~3か月もたてばみんな顔見知りになりそうです。 まだここで一週間過ごしただけですが、スタジオ的...

サービスデザイン思考の教科書:This is Service Design Thinking

去年の年始に読んだサービスデザインの教科書、This is Service Design Thinking。いまデンマークのいるきっかけのひとつでもあります。教科書として書かれたこともあって、深く知りたいニーズには向きませんが、イントロダクションとしては最適です。歴史的なこと、実践的なこと、学術的なことまで、バランスよく網羅されています。 翻訳の提案のために、下訳した目次の項目をせっかくなので公開します。一番難しかったのはタイトルのThis is Service Design Thinkingをどう訳すか。著者たちも本文のなかでわざわざ説明しているくらいのタイトルです。いきなりの難題です。私の訳は・・・、仕方なくこうなりました。 =====目次===== This is Service Design Thinking. Basic - Tools – Cases これがサービスデザイン思考です。 基礎・ツール・実践  出版社  john Wiley & Sons, Inc. / BIS Publishers, 2010年 著者  Marc Stickdorn, Jacob Schneider 【構成(目次)】 まえがき、本文全七章、付録、著者について、参考図書一覧、索引        【概要】 目次 イントロダクション まえがき   ・サービスデザイン思考の教科書をめざして   ・本書の構成 基礎、ツール、実践について デザインを超えたデザイン これまでとは違う教科書づくりの方法   ・動機(モチベーション)とインスピレーション   ・経験(エクスペリエンス)と期待(エクスペクテーション)   ・アイデアとコンセプト   ・少し変な書名について クラウドソーシング・マップ  〈サービスデザインに関する情報を提供しているリンク集を紹介〉 この本の使い方  ・青い付箋は基礎、緑の付箋は手法、黄色い付箋は実践 サービスデザインとは何か? 基礎 定義集:超領域的手法としてのサービスデザイン   ・サービスデザインの定義 学術編 ・サービスデザインの定義 エ...

読み物としてもすごく面白かった「コミュニティー・キャピタル論」

先週の出張の行き来の半分はうたた寝、もう半分はこれだった。自分的に面白がれるポイントがつまっていて、食い入るようにほぼ往復の移動だけで読みきってしまった。これを新書にした編集者、えらい!(元は分厚い学術書があるようだから、おそらく編集者の手柄という推測) コミュニティー・キャピタル論 近江商人、温州企業、トヨタ 、長期繁栄の秘密 (光文社新書)   面白かったポイントを3つほどにまとめてみる。 ポイントその1は、時と場所を超えているところ。三方よしで知られる近江商人の詳しい歴史、現代を生きる中国温州の企業、トヨタのサプライチェーン、と異なる時と地域の話が同じ仮説のもとに紐解かれる面白さ。しかも、歴史上の人物も実在する人も、多くは実名ででてくるので、人間くささがにおってくるよう。 ポイントその2は、よくある起業家の成功談みたいなのではなく、成功する組織、危機に強い組織は、どういうコミュニティ構造を持っているのかという問いをもとに語られているところだ。いっときたくさん本がでた、ネットワーク理論のおさらいをすることもできる。(余談だが、コミュニティの規模は異なるがMITの先生の研究が紹介された「ソーシャル物理学」と似たような結論がでてるのも面白い) ポイントその3は、書名に「長期繁栄」とあるところにつながる。つまり、うまくいった人、組織のことだけでなく、コミュニティの周縁というか、それほど活躍しない人についても時にスポットをあて、その人がコミュニティとどういう持ちつ持たれつの関係を築いているのか(持たれつの方が多いようですけど)というところも紹介されているところだ。親戚を頼りに海外に渡り、言葉もままならないのに、ネットワークに守られながらそれなりに生きていけているエピソードは、何か希望すら感じる。 そして、これらの考察や分析は、その他のいろんな人や組織に照らし合わせて考えることができるというオマケつきだ。ソーシャル・キャピタルよりは、狭いコミュニティ・キャピタルという仮説の設定も絶妙だと思うが、その仮説の精度よりも、こうして時と場所を超えた想像をぐるぐるとめぐらさせてくれるところが良い。広く読んでほしいという新書の形式なので、そういう方向で書いてあるのだろう。そして、それは私に対しては大成功してい...