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People Centered Research:現場と作業場の往復運動

2週間のPeople Centered Researchのセッションが終わりました。「信頼」についてのブレーンストーミングからはじまり、インタビューや観察をしながら、アイデアをだし、練り、ブループリントやペルソナをつくり、最後にプレゼンという一連の流れを2~3名のグループですすめてきました。(2名は自分のチームのみ)

内容的には、これまでも経験あるものもあったのですが、2週間という期間内で、インタビューを経験し、現場にでて、手を動かして、フィードバックを得て、いくつかの手法をためしてみて、発表することができてしまう、というのが一番大きな発見だったかもしれません。あれこれ、文献を読みながら、そうかそうかとやっていくのも良いのですが、まずは現場にでてやってみる。やっぱり、それが一番なんだなと。

People Centered Research。自分にとっては、現場と作業場(教室)を行き来して、自分達のやっていること、考えていることを検証していく往復運動だととらえるようになりました。

現場の取材についても、ある程度なれていたと思っていましたが、アイデアを一緒につくるための取材(インタビュー)はなかなか新鮮でした。
 
インタビューというと、やっぱりインタビューされる側が主役なので、主役をたてるための仕掛けや姿勢が必要になります。しかし、アイデアづくりに協力してもらう、あるいは検証してもらうという目的となると、協力してくれる人たちとのコミュニケーションも微妙に変わってきます。ストーリーボードやイラストを見せながら、フィードバックをもらうというのも、思っていた以上に新しいアイデアの発見や気づいていなかった視点を意識するきっかけにもなります。
 
アイデアをつくる立場になると、どうしてもメタ的、鳥瞰的に考えてしまいがちです。しかし、現場での行動や協力者の声を意識的にひろうことによって、よりリアルな条件や制約や考え方にひきもどされます。(イノベーションを起こすには、リアリスティックになってしまってはいけないという意見もあるのだと思いますが)これが、結構よい刺激になります。
 
そして、具体的なアウトプットを出さなくてはならないので、細かいディティールを仲間と話し合いながら確認することが必要になってきます。時間を気にしながら、チームメートの意見とスキルと自分の意見とスキルを調整しながら、プレゼンを仕上げていきます。

自分のチームは、ある程度データをまとめた最終日前日のお昼すぎからモックアップをつくりはじめました。おもちゃのようなモックアップですが、そこでの議論が一番濃密だったように感じます。
 
People Centered Research。ぜひ、よりリアルな条件で取り組んでみたいです。
 
それにしても、デザインや建築の経験があるクラスメートたちの仕上げのクオリティが高いです。ほんのちょっとの違いのようにも思いますが、そこをケアできるのとできないのとでは大違い。精進せねば。。

来週からまた次のセッションに向かいます。コペンハーゲンにきて、まだ1か月なんて信じられません。
 
ありものでつくったモックアップ
 

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